腱板断裂について【原因から予防まで】

あなたは突然、肩の痛みや動きにくさを感じたことはありますか? それはもしかしたら、「腱板断裂」の可能性があるかもしれません。この記事では、腱板断裂についての科学的な根拠を元に、詳しく解説していきます。

腱板断裂とは

「腱板断裂」とは、肩を構成する四つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)からなる「腱板」が部分的または全面的に切れる状態を指します。腱板は肩関節の安定性を保つ役割を果たしており、断裂すると肩の機能が大きく損なわれます。

腱板断裂の原因

腱板断裂の原因は様々で、大きく分けて以下の2つの要素が考えられます。

  1. 外的要因: 外的要因による急性断裂は、一般的には急な強い力によるものです。スポーツ中の衝突や、重い物を落とした際の反動などが具体的な例です。例えば、野球のピッチングやテニスのサーブなどのように、肩に強い力が加わる動作は急性の腱板断裂を引き起こす可能性があります。
  2. 内的要因: 慢性断裂は、時間とともに腱板の構造が微細に損傷を受けて弱まり、最終的に断裂する可能性が高まるものです。これは通常、過度な使用や老化、または血流不足などによるものです。肩関節の血液供給が不足すると、腱板の組織が劣化し、結果として慢性的な腱板断裂へとつながる可能性があります。

腱板断裂の症状

腱板断裂の症状はその程度や位置によって変わりますが、主に以下のような症状が見られます。

  1. 肩の痛み: 肩の痛みは最も一般的な症状で、断裂した腱板の位置や程度により痛みの程度は異なります。肩を動かすときや安静時、特に夜間に痛みが強くなることがあります。
  2. 力の低下: 断裂した腱板により肩関節が正常に動作しなくなり、その結果、肩の力が低下します。これは、物を持ち上げる動作や、肩を上げる動作、または物を持ち続ける能力に影響を及ぼす可能性があります。
  3. 可動域の制限: 腱板断裂の程度により、肩の可動域が制限されることがあります。これは肩の動き全体が硬くなり、あらゆる方向の動きが制限される「拘縮肩」の症状と似ています。

腱板断裂の治療

腱板断裂の治療はその程度、患者の健康状態、生活スタイルによります。治療方法は大きく以下の2つに分けられます。

  1. 非手術治療: 軽度から中等度の断裂の初期治療として、物理療法、薬物療法、およびリハビリが主に行われます。物理療法では、電気療法や温熱療法が行われます。薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が炎症と痛みを軽減するために使用されます。リハビリでは、特に腱板を強化するエクササイズや拘縮を作らないための可動域訓練が重要です。
  2. 手術治療: 非手術治療が効果を示さない場合や、重度の腱板断裂の場合、手術が必要となる場合があります。腱の修復、肩関節鏡視下手術、開放手術、肩関節の全置換術などが一般的な手術方法です。特に重度の腱板断裂では、腱を再び骨に接着する修復手術が選ばれることが多いです。

腱板断裂の予防

腱板断裂は生活習慣や運動習慣の改善によって予防することが可能です。具体的な予防法は以下の通りです。

  1. 適切な体の使い方: 体の使い方を改善することで、肩に過度なストレスをかけるのを防ぐことが可能です。例えば、重い物を持ち上げるときや、同じ動作を繰り返すときには特に注意が必要です。また、スポーツや運動をする際にも、肩の動きや力の入れ方を適切に調整することが重要です。
  2. 筋力強化: 肩周りの筋肉、特に腱板を構成する筋肉を強化することで、肩関節を保護し、腱板への負担を軽減することが可能です。これには、専門家の指導のもとで行う筋力強化エクササイズが有効です。
  3. 休息: 長時間の運動や作業後は、必ず適切な休息を取ることが重要です。筋肉と腱が回復し、再びストレスに耐えられる状態に戻るためには、休息が不可欠です。休息は、筋肉や腱が回復するための時間を提供し、疲労からくる損傷のリスクを低減します。また、睡眠も筋肉や腱の修復に重要な役割を果たします。

それぞれの予防策は単独で行っても効果的ですが、これらを組み合わせて行うことで、最大の予防効果を得ることが可能です。適切な体の使い方、筋力強化、そして適切な休息を一緒に行うことで、肩の健康を維持し、腱板断裂のリスクを最小限に抑えることができます。

まとめ

腱板断裂は、日常生活の動作に大きな影響を与える可能性があります。急な痛みや動きにくさを感じたら、専門の医療機関に相談することをおすすめします。

腱板断裂のリハビリテーションは、筋力強化と可動域の改善に重点を置くことが一般的です。具体的には、肩周りの筋肉を強化し、適切な動きを再学習するためのエクササイズが行われます。

予防の観点からは、日常生活で肩に負担をかけすぎないことが大切です。長時間同じ姿勢でいる、または過度に重いものを持ち上げることは避け、適度なエクササイズを継続することが推奨されます。また、良い姿勢を保つことも、肩への負荷を軽減するために重要です。

腱板断裂は厄介な病状ではありますが、適切な治療と予防策によって、その影響を最小限に抑えることが可能です。患者自身が自分の体を理解し、必要な場合は専門的な助けを求めることで、健康的な生活を送ることができます。

理学療法士として私は、あなたの身体が最善の状態を保てるように、あなたをサポートするためにここにいます。ぜひお気軽にご相談ください。